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書籍番号 |
57823 |
書 名 |
続・東奔西走考古抄 小田富士雄喜寿記念文集 |
シリーズ |
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データ |
B5 172頁 |
ISBN/ISSN |
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編著者 |
小田富士雄(私家版) |
出版年 |
2010年10月 |
出版者 |
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価格(税込) |
1,680円 | はじめに―古稀から喜寿へ― 二〇〇四(平成十六)年三月に福岡大学を定年退職して七年を経過し、 本年で喜寿を迎えることとなった。この間二〇〇九年三月まで出講して 考古学特講「原始・古代の信仰と祭祀」を連続講義して一応所期の目的 を達することができた。これはさきに大学退職に際して行なった最終講 義(本書Ⅰ-10)で、それまで私自身がかかわってきた考古学の分野で、 抜けおちていた〝思想史の考古学″ともいうべき部門について探究して みたいという抱負を述べたことにあった。さいわい出講の機会を与えられ たので、その期間にこのテーマと取組んでみたいと考え、縄文時代から 始めて弥生時代・古墳時代・古代とすすめて、古代末期の臼杵石仏の 出現と系譜までたどりついた。原始神道に始まり、時代の経過とともに 神祇信仰・仏教・儒教・道教・陰陽五行説・原始修験等、中国・朝鮮半島 に始まりわが国への導入と変容などに及んでくるにつれて、白身の浅学 を再認識させられそれらを克服するための格闘の連続であった。そして 終講を迎えての達成感と学者冥利を再び実感することができた。 つぎに気付いたことは、一六年間の福岡大学の講義生活(本書Ⅱ―3) のなかで十分にふれることのなかった古墳時代から古代への転換の時代 について、歴史学と考古学などを総合した立場からのアプローチが今後 の研究をすすめるために必要だということであった。これをとりあえず〝古 代学〟と称しておこう(本書Ⅱ―8)。そこで私どもが永年続けている九州 古文化研究会のなかに「7世紀史研究」部会を発足させることを提唱した。 幹事会の了承も得られて現在進展しつつある(本書Ⅰ-13) このほか本書の収載内容では、すでに四O年前に終了した沖ノ島祭祀 遺跡の調査関係(Ⅰ―4・5・6、Ⅱ―2)や、回顧談とかかわるもの(Ⅱ―2・3 ・5・6・9)が目につく。前者は昨今世界遺産への登録をめざす時流のなか で、全調査にかかわった〝語り部″として再登用されてきたことにあり、後 者は当該対象に当初から関与するところのあった私の経歴から、現在に 至る経緯を若い世代に伝えることを要望されたからである。ともに私と若い 世代との問に、時間的断絶がある九州地方の事情によるところである。 以上のようにこの七年間は、以前の現役時代から脱皮して、研究面での 私の宿題や、社会への還元ともいうべき面を新たに果しつつある期間と 位置ずけられるであろう。本書はこの間の活動記録である。喜寿を迎えた 機会に、これまでの私の活動に理解を示され、御支援・御教導いただいた 方々への感謝の微意を表したく企画した次第である。 私はさきに定年退職にあたって『東奔西走考古抄』を発刊した(二○〇四 年三月)。そこで本書もこれにつづく続編に位置ずけるのが適当であろうと 考え、本書の構成も基本的に前書に準ずることとし、Ⅰ~Ⅳに類別した。 そのなかでⅠ部を「研究余滴」(前書)とせず「研究談叢」としたのは、前書 より研究論考的性格がかなり顕著にみられると判断したからである。 (著者前書きより抜粋・掲載させていただきました)
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