今回の研究集会では官衙・集落から出土する遺物のうち大型甕
(須恵器甕)を扱う。大型甕は大容量の貯蔵専用器として食器類とは
異なる特性を有する器種である。
製作・運搬にコストがかかるものの、官衙や集落での営みに必要な
道具のひとつであった。官衙では集中的に出土する事例や甕据付建物の
存在など、貯蔵用・醸造用として使用されていたことがわかる。
いっぽう一般集落では多量に出土するものではないが、貯水容器として
の使用が推測されるとともに、集落における共同飲食儀礼において準備
された酒の醸造・貯蔵にも使用されていた可能性がある。
今回の研究集会では、このような大型甕の製作・流通・使用・廃棄の
実態についてあきらかにし、その歴史的な位置づけを試みたい。
大型甕は破片で出土することが多く、扱いの難しさから従来調査・
研究の対象として注目される機会が少なかった。しかし、大型甕は製作
から使用・廃棄に至る痕跡をとどめており、出土状況をふまえることで
遺跡の性格づけにも関わる貴重な情報を内包した遺物と考える。
大型甕の検討により、古代の官衙や集落の新たな側面について迫りたい。
Ⅰ 報 告……………………………………………………………
9
宮都における大甕………………………………………小田 裕樹
10
北陸における官衙・集落と大甕
―分析・理解に向けての視点と事例を中心として―
………川畑 誠
33
古代の地方官衙・集落・寺院と大甕…………………田中 広明
79
長岡京の甕据付建物について…………………………木村 泰彦
107
大甕の生産・流通の変遷について
―垂下形縁帯状口縁をもつ大甕を中心に― ……木村 理恵
123
大甕を使う―文献史料に見える「甕」とその用法
……………三舟 隆之
135
Ⅱ 討 議
資料編
遺跡目次………………………………………………………………
177
凡 例…………………………………………………………………
178
Ⅰ 宮 都……………………………………………………………
179
Ⅱ 官衙・集落・その他……………………………………………
251
参考資料……………………………………………………………
284
Ⅲ 表………………………………………………………………… 293
表1 遺構一覧
…………………………………………………… 294
表2 文献一覧 ……………………………………………………
301
表3 掲載図出店一覧 ……………………………………………
304
遺跡目次(掲載図版付き)………………………………………… 308