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書籍番号 81058
書  名 中国・韓瓶の研究
シリーズ
データ B5版
ISBN/ISSN 978-4864451581
編 著 者 関口広次著
出 版 年 2022年4月 
出 版 者 六一書房
価   格 3,850円(税込)

 【内容簡介】

 「韓瓶」との名称は、伝承によれば、南宋時代の将軍で
あった韓世忠(1089-1151)に由来した細い長胴形の瓶で、
軍内で酒瓶あるいは水筒として使用されたとされる。
類似した形状の瓶は南宋時代後の元時代にも盛んに生産
され、その使用は明時代にも及んでいる。後述する様に、
韓瓶の出土は軍事拠点、港町、酒造り地点そして沈船
などからの出土が多い。遺構としては井戸中あるいは井戸
付近からの出土も多い。時代と出土地域により、口縁形状
に違いが多少みられ、生産地に違いのあることが予測され
る。ただ細い長胴形の瓶で、鉄分の多い粗い胎土の陶器質
で灰釉が薄く施された点においては、ほぼ共通する。
その形状は今日的な感覚からすると、長胴の割に底径が
小さく不安定なかたちであり、立てておくには心もとなく、
その使用目的を水筒とすることに幾分の疑問も生じよう。
例えば、日本の中近世にあっては、揺れの激しい船中では、
船徳利と称される三角フラスコ形の底部が広く安定して
倒れにくく、また頸部を細く絞って液体の漏れを防止
できる形状の瓶が知られ、備前船徳利などは著名である。
それは韓瓶とは対照的な形状である。しかし、韓瓶の
水切りをよくした三角断面形状の口縁部、小さめの口縁
径は液体容器であることに異論はなかろう。
  中国古代の土器から尖底形の長胴瓶は知られており、
綱や紐を巻いて河川から水を汲み上げ、あるいは井戸に
落として水を汲み上げるのに適した形状として理解され
てきた。近年の土器研究によれば、尖底土器は沈澱分離
法による醸造用の容器との説がある。底部径を極めて
小さく作り、口縁径も小さく絞った長胴形の韓瓶は尖底
土器の延長線上にあるとことは確かで、いわば試験管形
で攪拌・沈澱分離に便ならしめた形状と言える。後述する
酒造り場での使用は、そうした目的で使用されていたと
想定され、また水筒としては不純物の沈澱分離を目的と
しての機能を重視した形状と言えるのではなかろうか。
韓瓶が酒器から発展援用されたとの説は以前からあった
ことには留意しておきたい。
  以上の様な機能に即した目的で発展進化した形状の
韓瓶は、南宋時代から元時代にかけて、より具体的には、
どこの窯で生産され、またどういった性質を有した遺跡
で消費されていたのかを中心に考察して行くこととする。
(本書”はじめに”より)
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 【目次】
第1章 中国での韓瓶生産窯址
第1節 浙江省杭州市瓶窯窯址
第2節 江蘇省宜興筱王窯址
第3節 江蘇省宜興真武殿窯址
第4節 寧波周辺の窯址
 郭童[奥/山]窯址
 寺龍口窯址
 庵山窯址
 于家山窯址
第2章 中国での消費遺跡出土の韓瓶
第1節 浙江省杭州出土の韓瓶
 鳳凰山下採集の韓瓶
第2節 浙江省寧波出土の韓瓶
第3節 江蘇省鎮江市周辺出土の韓瓶
 金山寺保管韓瓶
 張家港出土の韓瓶
第4節 上海市出土の韓瓶
 青龍鎮遺跡出土韓瓶
 志丹苑元代水閘遺跡出土韓瓶
 上海奉賢県拓林鎮馮橋村宋代井戸出土の韓瓶
第5節 伝江西省景徳鎮市浮梁県古城址出土の韓瓶
第6節 南京大報恩寺遺跡J16号井戸出土の韓瓶32
第7節 江蘇省太倉出土の韓瓶
第8節 沈船出土の韓瓶
 半洋礁1号沈船出土韓瓶
 綏中三道崗元代沈船出土韓瓶
 蓬莱古船出土の韓瓶
 南京明宝船廠六作塘出土の韓瓶
第9節 その他
 浙江省桐廬県象山橋村南宋墓出土の韓瓶
 江蘇省南京市明代徐達家族墓出土の韓瓶
第3章 日本での消費遺跡出土の韓瓶
第1節 福岡県博多遺跡群出土の韓瓶
第2節 北部九州の経塚出土の韓瓶
第3節 島根県益田市豊田神社経塚出土の韓瓶
第4節 長崎県鷹島海底元寇沈船出土の韓瓶
第4章 韓国での出土事例
第1節 新安沈船出土の韓瓶
第2節 韓国生産の韓瓶
おわりに

写真・図版出典
中国・韓瓶出土主要遺跡名一覧
附図 江南地方韓瓶出土遺跡関連都市図
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