【趣 旨】
石上神宮から天理市の市街中心部にかけて広がる布留遺跡は、
旧石器時代から現代にわたる人々の歴史が刻まれています。
特に古墳時代は物部氏の活動拠点として著名ですが、令和2
年に歴史的景観の復元と題して共同研究を行い、概要や基本的
内容をまとめました。その後、さらに多くの研究者が集い、出
土資料の検討や分析を行いました。その結果、古墳時代の様相
のほか、縄文時代や奈良時代における布留遺跡の重要性など、
数多くの新知見が得られました。
今般、天理市観光協会の全面的なご支援をいただくことがで
きましたので、成果の一端についてご報告いたします。
【報 告】
布留遺跡の概要 池田保信
布留川扇状地縄文遺跡群の動態 岡田憲一
布留遺跡から出土した縄文土器胎土の時期的変遷 河本純一
布留遺跡に集まった人びと―外来系土器から見た地域間交流―
山本 亮
石上神宮禁足地出土刀剣と布留遺跡の鍛冶
―金属学的調査成果などから迫る― 真鍋成史
杣之内古墳群の復元 小田木治太郎
古墳からみた布留遺跡の集団間関係―須川1号墳出土埴輪の
紹介― 和田一之輔
布留遺跡出土の玉類と玉生産 大賀克彦
鹿角と木―刀剣装具の材質転換とその意義― 岩井顕彦
塚穴山古墳出土工具の検討―魚々子鏨の可能性について―
橋本英将
布留遺跡における「板石硯」の認識とその意義
久住猛雄
布留遺跡出土の須恵器について 中久保辰夫
布留遺跡における製塩土器と塩利用 岩﨑郁実
布留遺跡の鉄器生産の様相―鍛冶関連遺物の分析を中心として
―
繰納民之
布留遺跡の移動式カマド 中野 咲
ウマ遺存体からみた布留遺跡における馬利用 丸山真史
布留遺跡出土木質遺物にもとづく木材利用 鶴来航介
布留遺跡における樹皮利用と木器製作について 浦 蓉子
古代布留遺跡と古代宮都の出土土器―関連性の追及と理解―
三好美穂
布留遺跡周辺中世開始期の墓制 佐藤亜聖
-杣之内古墳群(須川)地区火葬墓出土の石造塔婆
とその地域性-
・上井佐妃
【誌上報告】
布留遺跡における砥石の消費形態―生産域出土品を対象として
―
森 貴教
布留遺跡出土刀剣装具研究の余波 齊藤大輔
大和・布留遺跡と高地性集落の問題
―豐田山遺跡と別所裏山遺跡の立地と消長を中心に(断章)
― 森岡秀人