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書籍番号 82216
書  名 秦帝国と封泥 社会を支えた伝送システム
シリーズ
データ B5 185頁
ISBN/ISSN 978-4864451802
編著者 上野祥史 下田 誠編
出版年 2024年3月 
出版者 六一書房
価 格 6,600円(税込)

  【内容簡介】
 
 本書は戦国時代後半から、統一秦、楚漢戦争を経て前漢初期に
いたる時期を対象としている(中略)
 この時期は、文字や制度が社会を管理する中国歴史時代の幕開けでも
ある。その後は、科挙が象徴するように、ゆたかな識字層に支えられて、
中華帝国は二〇〇〇年の歴史を歩むことになる。(中略)
 この秦という社会を支えたシステムを、本書では「捺印」にクローズ
アップしてとらえた。社会を支えたシステムとは、端的にいえば、文字
を利用して制度を運用することであり、それを「捺印」にかかわる三つ
の視座でとらえてきた。一つは、「捺印」の所作や行為を復元すること
であり、一つは「捺印」が組み込まれた一連の行動様式を評価すること
であり、一つは捺した印章の文字を評価することである。
それぞれ、「第一部 封泥の実態」、「第二部 文字を書き印を捺す」、
「第三部 秦封泥の文字と秦の社会」が該当している。(中略)
 方法論や関心の異なる研究者が集い、情報や物資の伝達を検討するこ
とは容易ではない。しかし、封泥を共通の資料として、各自が新たな着
眼点を見出し、それを共有することで、少しずつ研究は進展した。こと
に、理化学分析との協業は大きな役割を担った。X線CTスキャン装置を
利用した分析の推進は、各研究者には大きな刺激を与えた。(中略)
 新たな研究は、新出資料のみが切り拓くものではない。既存資料の再
評価や分野を横断した検討にもその可能性は潜在している。本書で示し
た、封泥の形態情報の検討、封泥と簡牘資料を対照した検討、あるいは
封泥や印章の文字の検討などは、それぞれの分野に新たな影響を与える
ものと見受ける。秦封泥研究や戦国秦漢時代の研究、文書行政の日中比
較研究等への貢献も望まれる。
 本書は、より多くの方の手に届くよう、できるだけ平易な形で示すこ
とを心がけた。内容によっては、専門性が高いもの、あるいは独創性が
強いものも含まれている。そこは、秦漢時代の研究の緻密さゆえと、お
許しを願いたい。(本書“後記”より抜粋)
 
 【目 次】
 
第一部  封泥の実態

 第一章 秦漢封泥とは                           谷 豊信     3
 第二章 観峰館所蔵封泥が提起する秦封泥の検討視点  
                                          野祥史・瀬川敬也    17
 第三章 封泥から復元する「捺印」の所作
                   ―外面形態情報と内部透過情報― 上野祥史    39
第二部  文字を書き印を捺す

 第一章 秦の文官のリテラシー 
                   ―封緘という所作をめぐって―  籾山 明    57
 第二章 秦漢時代の小官印とその使用             青木俊介    73
 第三章 皇帝の〝手足の指の先〟―秦帝国中央集権の現場―    
                                                  髙村武幸    95
 第四章 官印は誰が捺したのか―実用と象徴の間―  髙村武幸   109
 
第三部  秦封泥の文字と秦の社会

 第一章 秦帝国の形成と秦郡の変遷         鶴間和幸   121
 第二章 秦の郡県と秦封泥―丞印からみた郡と県―  下田 誠   147
 第三章 漢字書体ヒエラルキアと秦帝国―書体・書風変遷攷―    
                                                  松村一徳   159